• 公開日:2018年05月01日
  • 最終更新日:2018年05月08日
初めての職場恋愛 真面目な新卒社員の彼との恋の行方は・・・

新卒で入った会社を早期で退職し、近所のスーパーでパートを始めた当時二十歳の私。同じ職場で働く彼は、大学を卒業したばかりの二つ年上の正社員。ほんのすぐ近くで働いているものの、私はレジ担当、彼は青果部門担当。レジなんて商品を通すだけかと思いきや意外と覚えることが多く、お客さんもいる前なので余計に焦り、悪戦苦闘。始め一年ほどは自分の仕事以外に気が回らず、彼とは出勤時と退勤時に軽く挨拶するくらいでした。
少しずつ話せるようになってきたのは、仕事に慣れて余裕がでてきた二年目以降。レジ専門を離れてバックヤードで荷物出しをするようになると、そこに彼もいました。新人の彼も同じくまだ自信がないのか、メモ長を広げて真剣な顔でパソコンに向かっています。邪魔をしないようにと、その後ろでひっそりと段ボールを崩していく私。そのうちタイピング音がやみ、一息ついた彼の背中が大きく伸びをします。椅子を回転させて振り返ると、笑顔で「お疲れ」と声をかけてくれました。私がいることに気付いていたようです。それからは空き時間や休憩が重なった時に、二人で雑談をするようになりました。
早期でさっさと離職してしまった私と違って、彼は同じ新卒で仕事を頑張って続けている。その点で彼が眩しく見えました。もちろん、いつだってうまくいっているようには見えません。対応が悪いとお客さんに叱られて何度も頭を下げていたり、社会人としての心構えが甘いと店長に長々とお説教されている姿も見かけました。「もうやっていく自信がない」と、弱気になって愚痴を零している時もありました。私にできることは、話を聞くことだけでした。さっさと逃げ出した私が頑張っている彼にかけられる慰めの言葉なんて、どうしても見つからなかったのです。それでも彼は「ごめんね。聞いてくれてありがとう」と毎回笑顔で言って、仕事へ戻っていきました。自分にはできなかったことを打ちのめされながらも続けている彼だからこそ、私は惹かれたのだと思います。
ある日の帰り際、同じく仕事を終えたタイミングの彼に呼び止められました。携帯電話(当時はまだガラケーでした)を手に、こっちに向かって駆けてきます。メールアドレスと電話番号の交換をしました。その夜、彼から初めてのメールがきました。「改めて、これから宜しくお願いします」という、いかにも真面目な彼らしい文章でした。笑って「こちらこそ宜しくお願いします」と返しました。出会ってから一年半、やっと個人的な交流が始まりました。
彼と親しくなって、意外なことがひとつ出てきました。前よりも仕事がやりやすくなったのです。それぞれの持ち場には必ず一人はベテラン社員がいて、お客さんからの問い合わせで分からないことがあればレジが走って聞きにいかなければならないのですが、相手は社員と思うと緊張してしまい、若い私はなかなか上手く連携がとれません。そんな時に彼がいると話に詰まらずスムーズに相談することができました。安心感があったのだと思います。それにスーパーという場所は主婦層が多く集まり、どうしても同年代が少なくなりがちです。たまに学生の子達が入ってきても、部活や勉強を理由にすぐに辞めていってしまいます。そんな寂しい状況の中で、彼だけはいつも話し相手になってくれると思うと心強かったです。
そんな職場環境の中で、話す機会が多かった。ただそれだけの理由だったのかもしれません。なんとなく、お互いを想い合っていることに気付いていました。それは周囲の目にも明らかだったようで、仲のいいパートさんに「早く付き合いなよ~」とからかわれたりしました。そういうなんとなく幸せなムードが続いていたある日、今までとは違うメールが届きました。
出会って二年目の冬でした。うちの県内には有名なイルミネーションスポットがあります。冬の定番デートスポットです。そこへ二人で行こうというお誘いでした。もちろんすぐにOKしました。当日は服装に気合を入れまくって、いつものシャツにエプロン姿ではなく、よそ行き用の私服姿でご対面。先に軽く夕飯を済ませてから、彼の運転で会場へ。周りはカップルだらけで、手を繋いだりべったりくっついて歩いていたり・・・微妙に距離をとっているのは私達だけでした。いつになく口数の少ない彼の横顔をこっそり盗み見ると、なにか考え込んでいるような、緊張しているような表情で口を結んでいました。メインの大広場に辿り着き、観賞しながらゆっくり並んで歩き進めていると、彼がやっと口を開きました。「あのさ、実は好きなんだけど、付き合わない?」よっぽど緊張していたんでしょう。唇が引きつって声が裏返り、顔も真っ赤で泣きそうになっていました。不器用な言葉だったけど気持ちは十分に伝わってきました。その場でOKの返事をし、私達はカップルになりました。

今でもその彼とはラブラブです! と続けばよかったのですが・・・お付き合いしていたのは、その後の半年だけでした。丸三年が過ぎたところで彼は転勤が決まり、職場を離れなくてはいけなくなりました。それとほぼ同時期に、私も正社員として再就職が決まり、長年お世話になったそのスーパーをあとにしました。お互いに新しい場所で一から覚えなくてはいけないことばかりで、家に帰っても疲れてメールすらしないことが増え、電話も週に一回あるかどうか。接客業なので休みも中々重ならず、会う機会も見つからず・・・。両思いを確信していた頃と同じように、お互いに終わりを確信していたのだと思います。そのままフェードアウトし、はっきりした言葉もないまま自然消滅しました。あれから五年、今彼がどこで何をしているのかはもうわかりません。でもきっと、立派な社会人として成長していると信じています。

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