• 公開日:2018年05月08日
  • 最終更新日:2018年05月08日
ずっと恋愛相談にのっていた彼の好きな相手は…

私がそれまで勤めていた会社を退職し、資格を取るために学校へ通い始めたのは26歳の時でした。
どうしてもその資格が欲しくて両親に無理を言い、学費を出してもらっていたので、せめて生活費くらいは…と、テスト期間以外はある居酒屋でアルバイトをしていました。
当然、周りは年下の現役の学生さんばかり。
それでも、30歳近い私のことをみんな「姉さん」と呼んで仲良くしてくれたので、アルバイトはとても楽しいものでした。

ある日、同じアルバイト仲間の19歳の男の子から、「好きな人が出来たんだ」と聞かされました。「へぇー!うまくいくといいねぇ」と答えると、「でも相手はまだ僕の気持ちなは気付いてないんだ、片想いなんだよ」と言うので、「告白しないの?」と訊くと、「うん、その子、最近フラれちゃったみたいでまだ未練あるみたいで。僕のことを好きじゃないのわかってるから」と言うのです。
その後もずっと、ルームシェアしてる友人にも相談してるんだ、彼女に次の彼が出来る前に告白しようか迷ってる、などと、いつも話を聞いては相談に乗っていました。

9歳も年下の男の子の恋愛の悩みを聞くのはある意味新鮮だったのと、「姉さん」として女の子の気持ちとかアドバイス出来たらなぁ〜という思いから、いつもバイト終わりの賄いを食べながらだったり、ファミレスに行ったりして話を聞いてはこうしてみたら?などとアドバイスをしていました。
社会人になって年上ばかりと接してきた仕事を辞め、10歳も年下の子達に囲まれてのアルバイト、そして交流。毎日が新鮮でした。
だから、そんな悩みを打ち明けてくれることも頼られてる気がして嬉しかったのです。

「それとなく意識してること伝えてみれば?」とも言ったのですが、「僕、自分の気持ちを隠すのうまいんだ。彼女には絶対に知られない自信がある!」と言うのです。
「知られた方が向こうも意識するだろうし、それとなくアピールしてみればいいのに」と言っても、「それをやると今より距離を持たれそうな気がするから、やりたくないんだよ」と。
「それでいいの?私ならさりげないアピールするけどなぁ」などなど、真剣に相談に乗っていました。
若い男の子ってそういう風に考えるのかなぁ〜と、私も色々恋愛について考えさせられることが多く、相談に乗るのも楽しかったのです。

ある日、私が勉強のために博物館に行くことを学校で勧められたと言ったら、その子が「一緒に行く」と言ってくれて、バイト仲間3人で博物館に行きました。
それからしばらく経った頃、夜中に呼び出され、電車なくなっちゃったからファミレスの暇つぶしに付き合って」と言われ、「いいよ、博物館に付き合ってかれたから、今から行くよ」と言って、朝までおしゃべりに付き合うことに。

いつものくだらないおしゃべりもたくさんしましたが、「僕、彼女とはもう付き合えないだろうな。もう姉さんでいいや、付き合ってよ」と言われました。
その言葉に対して私は「ダメダメ!付き合って〜とか、ヤケになっていう言葉じゃないよ。相手が本気にしちゃったらどうするの?その言葉は絶対に本気の時しか言っちゃダメだよ」と、いつになくちょっとキツイ言葉で言いました。「そうだけどさー、僕、姉さん好きだからさ」と言うので、「それはありがたいけど、私はあくまでも姉さんでしょ?本気で付き合いたい相手にしか言っちゃダメだよ!」と再度言ったところ…
「…姉さんだよ。姉さんなんだよ」と。

それでもまだ私は本気とは思えませんでした。
「まさかーそんなことあるわけないじゃん。私、9歳も年上だよ?それに、ずっと私に相談してきたじゃない?本気の相手に相談なんて普通しないでしょー」と笑い飛ばしました。
「だから、言ったでしょ?僕、相手に気持ち隠すの上手なんだって」と言われ、「あ…」と思いました。
確かに、彼の言う好きな相手が私だとしたら、私は全く彼の気持ちに気付かなかったことになります。

その頃、朝になり、電車も走り始めたので、ファミレスを出て外を歩きました。
まだ明け方で、人もほとんど歩いてない時間帯です。
「姉さん、この前フラれちゃったーって言ってたじゃん。だから、僕のことなんかまったく眼中になかったことも知ってるよ」とも言われました。
「って、急に言われても、信じられないよ、ずーっと話に出てた相手が私なんて…」と言った瞬間、ギュッと抱きしめられたのです。
「これで信じてくれる?」と言いながら。

空は明るいけど、ほとんど人のいない街中でいきなり抱きしめられる…私自身、まったく恋愛感情を持たない相手、しかも9歳も年下で、子供のように思っていた男の子。
背が高く包み込むようにきつくもなく緩くもなく、「キュッ」という表現がぴったりの抱きしめ方。「子供じゃないんだ、男なんだ…」と思った瞬間でした。
でも、私の中で恋愛感情は生まれませんでした。やっぱり、9歳年下の男の子、だったのです。しばらくして、彼はサッと離れ、「あーめっちゃ恥ずかしい!ごめんね、でも本当なんだよ。言えただけで良かった。また明日ね!」と帰って行きました。

そして次にアルバイトで会った時は、お互いそれまでの関係のまま、アルバイト先の男の子と姉さんの関係。変わったのは、恋愛の相談をしなくなったことだけで、いつものおしゃべりなどはそのまま変わらず、それまでと同じ交流は続きました。
そして2年の学生生活が終わり、私はアルバイトを辞め、実家に戻りました。
その後、彼との連絡も自然に途絶え、今では連絡先も知りません。

あれから約15年。私はもうすぐアラファフになります。彼も35歳くらいになってるはず。でも、私の中では、今でも明るい「男の子」のイメージのままです。
恋愛感情は持たなかったけど、今思い出してもキュン!とする気持ちは残っています。
彼がその後、本当に好きになれる相手と知り合ってうまくいってることを願うばかりです。

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